第70回記念 中美展
2018年11月10日から11月16日まで
東京都美術館
上部の照明2カ所と、右端から左右中央部分まで正三角形状に伸びる影は写真撮影時の映り込みです。頭の中でこの部分を除外してこの作品をお楽しみください。難しいですか?
壁とポスターと言えば佐伯祐三。でもあれほどワイルドなタッチではないし、そもそもこのパースは佐伯のイメージではないですね。佐伯作品は真正面か、斜めだったら建物全体というイメージがあります。なんにせよ、この所々剥げて下のレンガがむき出しになった壁面とポスターの美しいこと。
上部中央右寄りの黒い影は去って行く人影のようにも見えます。左側中央部分の褐色部分は湖面でしょうか、中央下のブロックは倉庫の書類の束か、もしくは木材か、はたまた石積みでしょうか。どれもそのように見える場合もあれば全く何も思い浮かばないこともあるでしょう。それでも抽象画はその不定型なフォルムと色合いで見る人を刺激し、様々な記憶を想起させるのです。
ぱっと見、南国あたりの夕景かと思ってよく見ると、背景は巨大な電子基盤でした。電子基板+生命=自我、という図式でしょうか。枯れ木の無数に枝分かれした様子がニューロンの樹状突起のようであります。
この作品をどうやって形容しようか15分ほど考えましたが、何も言葉が出てきませんでした。矩形とモノトーンの調べをたっぷりとお愉しみください。
この蜘蛛の巣が張ったような網目状のごつごつとしたマティエールが、何百年何千年という時間を経た神話の世界にぴったりです。じっと見ていると神々の怒りを買うかのような、そんな畏怖感も覚えます。
もう今年の猛暑は過ぎてしまいましたが、暑いのは人間も動物も昆虫も植物もみんな一緒です。寒いとみんな家の中に閉じこもってしまいますが、暑い方が活発になるのは、これもみんな一緒ですね。箱庭的な面白さ満載です。